「食品衛生行政」国の動き 2022(令和4)年12月

 
(株)中部衛生検査センター顧問
森田邦雄
 

1 「食品安全総合情報システム」公表

 令和4年12月22日、食品安全委員会が公表した標記システムに次の記事が掲載されている。

https://www.fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/search?year=&from=struct&from_year=2022&from_month=11&from_day=5&to=struct&to_year=2022&to_month=12&to_day=9&max=100

(1)世界保健機関(WHO)は、2022年12月7日、ヒ素に関するファクトシートを更新した。

概要は、以下のとおり。
1. 主な事実
1)ヒ素は、数か国の地下水に高レベルで自然に存在する。
2)無機形態のヒ素は、毒性が強い。
3)汚染水を飲用、食品調理及び食用作物の灌漑に使用することで、ヒ素により公衆衛生を最大の脅威にさらす。
4)長期にわたる飲用水及び食品からのヒ素ばく露は、がん及び皮膚病変の原因となる可能性が高い。また心血管疾患及び糖尿病にも関連している。子宮内及び幼少期のばく露は、認知発達に対する悪影響及び若年成人の死亡増加と関連している。
5)影響を受けた地域での最重要活動は、安全な水を供給することにより更なるヒ素ばく露を防止することである。
2. 概要
3. ばく露源
4. 健康影響
5. 問題の規模
6. 予防及び管理
7. WHOの対応

https://www.fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/show/syu05960010294

(2)欧州疾病予防管理センター(ECDC)は、2022年12月7日、A型肝炎に関する2020年疫学報告書(8ページ)を公表した。

主な内容は、以下のとおり。
1. 2020年に欧州連合/欧州経済領域(EU/EEA)の29か国で4,397例のA型肝炎症例が報告された。
2. EU/EEAの届出率は、人口10万人対1.0症例であった。EU/EEAの21か国は、届出率が人口10万人対1症例を下回った。届出率が高かったのは、ブルガリア(人口10万人対18.7例)及びルーマニア(同5.2例)であった。
3. 2020年は、2007年にEUレベルでのA型肝炎サーベイランスが開始されて以降、報告症例数及び届出率が最も低かった。これはCOVID-19パンデミックによる症例報告数への影響、2017年及び2018年に発生した大規模な複数国にわたる集団感染後に、リスクが高い集団において自然感染による免疫を有する者の割合が増加したこと、また、リスクが高い集団における優良衛生慣行の実施やワクチン接種の増加などA型肝炎予防対策の認識が高まったことが複合的に影響した可能性がある。
4. 5歳から14歳までの小児が症例の大きな割合(31%)を占め、届出率(人口10万人対3.2症例)も最も高かった。
5. 2020年は、3つの複数国にわたるA型肝炎クラスターがEPIS-FWD(訳注:食品、水媒介疾病及び人獣共通感染症に関する疫学情報共有システム)へ報告された。遺伝子型亜型IAの感染による複数国にわたる2つのクラスター、IBの感染による1つのクラスターが報告された。

https://www.fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/show/syu05960490470

(3)米国食品医薬品庁(FDA)は、2022年11月16日、動物細胞培養技術を用いて製造された食品の最初の市販前協議の完了を公表した。

 概要は、以下のとおり。
 FDAは、動物培養細胞から製造された食品の最初の市販前協議を完了した。FDAは、UPSIDE Foods社がFDAに提出した情報を評価し、同社の安全性に関する結論について現時点で更なる質問はない。同社は、動物細胞培養技術を用いて、ニワトリから生細胞を採取し、制御された環境において採取した細胞を増殖させ、動物培養細胞食品を製造している。

 FDAとUPSIDE Foods社との市販前協議には、同社の生産工程、及びその生産工程によって製造された培養細胞材料の評価が含まれており、これには細胞株及び細胞バンクの確立、製造管理、並びに全ての成分及び材料(input)等がある。この任意の市販前協議は、承認手続きではない。代わりに、同社によって共有されたデータ及び情報をFDAが慎重に評価した後、同社の安全性に関する結論について現時点で更なる質問はないことを意味するものである。

https://www.fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/show/syu05