「食品衛生行政」国の動き 2023(令和5)年2月

(株)中部衛生検査センター 顧問  森田邦雄

1 「食品安全総合情報システム」公表

 令和5年2月13日、食品安全委員会が公表した標記システムに次の記事が掲載されている。

 欧州食品安全機関(EFSA)は、2023年1月19日、熟成肉(aged meat)の微生物学的安全性に関する科学的意見書(101ページ、2022年12月6日採択、doi: 10.2903/j.efsa.2023.7745)を公表した。

 概要は、以下のとおり。

 本意見書では、牛肉のドライエイジング(dry-ageing)及び牛肉、豚肉、ラム肉のウェットエイジング(wet-ageing)が微生物学的ハザードとなる細菌及び腐敗細菌へ及ぼす影響を調査し、現在の慣行について記載している。「標準的な生鮮肉(standard fresh meat)」とウェットエイジング肉は類似したプロセスを経るため、これらはその期間に基づいて区別された。各工程の説明に加え、文献調査及び質問票によって主要なパラメータ(時間、温度、pH及び水分活性(aw))に関するデータが収集・整理された。

 すべての熟成肉(aged meat)に存在する可能性のある微生物学的ハザードには、志賀毒素産生性大腸菌(STEC)、サルモネラ属菌、黄色ブドウ球菌、リステリア菌(Listeria monocytogenes)、腸管毒素原性エルシニア属菌、カンピロバクター属菌及びClostridium属菌が含まれる。Aspergillus属やPenicillium属などのカビ類は条件が整えばマイコトキシンを産生する可能性があるが、相対湿度(RH)が75~85%、空気の流速が0.2~0.5m/sの条件下で肉の表面温度を-0.5~3.0℃に保てば、最大35日間は防ぐことができる可能性がある。主な食肉腐敗細菌には、Pseudomonas属、Lactobacillus属、Enterococcus属、Weissella属、Brochothrix属、Leuconostoc属、Shewanella属及びClostridium属細菌が含まれる。

 現在の慣行では、食肉の熟成は、標準的な生鮮肉の準備工程と比較して、微生物的ハザード及び腐敗細菌の量に影響を及ぼす可能性がある。定義され制御された条件下での熟成により、微生物学的ハザード及び腐敗細菌の量を、標準的な生鮮肉の準備工程において予測される可変的なlog10増加量と同等あるいはそれより低くすることができる。標準的な生鮮肉と比較して、リステリア菌及びエルシニア菌(Yersinia enterocolitica)(豚肉の場合のみ)並びに乳酸菌(腐敗細菌の代表)のレベルが、同等あるいはそれより低くなる時間及び温度の条件を確立するためのアプローチが用いられた。また、推奨されるベストプラクティス及び同等性評価の結果に基づいた、乾燥熟成牛肉の微生物的安全性をさらに保証する追加の管理活動が特定された。

https://www.fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/show/syu05990450149

2 くるみの特定原材料への追加及びその他の木の実類の取扱いについて

 令和5年3月9日、消費者庁は食品表示企画課名をもって各都道府県等衛生主管部(局)担当者宛て表記事務連絡を出した。

 これは、食品表示法に基づく食品表示基準が改正され、同基準別表14に、くるみによるアレルギー症例数の増加等を踏まえ、特定原材料として新たにくるみを追加されたことに伴うもので、その主な内容は、次の通り。

 今般、くるみによるアレルギー症例数の増加等を踏まえ、食品表示基準を改正し、特定原材料として新たにくるみを追加することになりました。

 つきましては、経過措置期間はあるものの、食品関連事業者等においては、原材料・製造方法の再確認、原材料段階における管理に関する仕入れ先への再確認や必要に応じて「食品表示基準について」の「別添 アレルゲンを含む食品の検査方法」による確認等を行うこと、これまでアレルゲンとしてくるみを表示していなかった食品関連事業者等においては、速やかに表示を行うことについて、関係者に対する周知をお願いします。

 また、特定原材料に準ずるカシューナッツについては、現在、木の実類の中でくるみに次いで症例数の増加等が認められることから、アレルギー表示をしていない食品関連事業者等に対し、可能な限り表示することをより一層努めるよう周知をお願いします。

https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_sanitation/allergy/assets/food_labeling_cms204_230309_03.pdf

3 生活衛生等関係行政の機能強化のための関係法律の整備に関する法律案(令和5年3月7日提出)

 令和5年3月14日、厚生労働省は今国会に提出した表記法案を公表した。

 その主な内容は、次の通り。

 生活衛生等関係行政の機能強化を図るため、食品衛生法による食品衛生基準に関する権限を厚生労働大臣から内閣総理大臣に、水道法等による権限を厚生労働大臣から国土交通大臣及び環境大臣に移管するとともに、関係審議会の新設及び所掌事務の見直しを行う。

 食品衛生基準行政の機能強化【食品衛生法】
① 食品等の規格基準の策定その他の食品衛生基準行政に関する事務について、科学的知見に基づきつつ、食品の安全性の確保を図る上で必要な環境の総合的な整備に関する事項の総合調整等に係る事務と一体的に行う観点から、厚生労働大臣から内閣総理大臣(消費者庁)に移管する。
② 薬事・食品衛生審議会の調査審議事項のうち、食品衛生法の規定によりその権限に属せられた事項であって厚生労働大臣が引き続き事務を行うもの(食品衛生監視行政)に関しては、厚生科学審議会に移管する。

https://www.mhlw.go.jp/content/001067044.pdf