「食品衛生行政」国の動き  2023(令和5)年6月


(株)中部衛生検査センター顧問 森田邦雄

1 粉ミルク中のクロノバクター・サカザキについて(Q&A)公表

 令和5年5月31日、食品安全委員会は、表記(Q&A)を公表した。

 クロノバクター・サカザキ(Cronobacter sakazakii)は、ヒトや動物の腸管、食品や自然環境に広く分布する細菌で、国立予防衛生研究所(現国立感染症研究所)に所属し、腸内細菌の研究で世界的に知られていた坂崎利一博士の功績をたたえ、米国人科学者が名付けました。

 以前はエンテロバクター(Enterobacter)属に分類されていましたが、2008年にクロノバクター属に再分類されました。菌株のわずかな遺伝子の違い、菌が含まれる食品の成分などにより耐熱性が変化し、6℃?47℃で増殖が可能で、乾燥した環境下でも長期間生残するとの報告もあり、特に次の注意を呼び掛けている。

 粉ミルクは無菌とは限りません!

 飲む直前に70℃以上のお湯で調乳し、速やかに消費しましょう。

https://www.fsc.go.jp/foodsafetyinfo_map/c_sakazaki_FAQ.html

2 トランス脂肪酸?リスク評価の意味を知ってほしい

 令和5年6月2日、食品安全委員会は、表記について掲載した。

 その主な内容は、次の通り。

 トランス脂肪酸を多く食べると、冠動脈疾患(狭心症や心筋梗塞等)の発症が増加する。

 日本人の推定平均摂取量は、総摂取エネルギー量の0.31%。WHOの勧告(目標)基準であるエネルギー比1%未満を下回り、通常の食生活では健康への影響は小さい。

 マーガリンなどの含有量は、近年大きく下がっている。

 製品のトランス脂肪酸含有量を下げると、飽和脂肪酸が増える傾向がある。

 飽和脂肪酸も冠動脈疾患リスクを上げる。

 栄養バランスのよい食事が、トランス脂肪酸対策となる。

https://www.fsc.go.jp/iinkai/20shunen/01_toransushibosan.html

3 令和5年度食品、添加物等の夏期一斉取締りの実施について

 令和5年6月8日、厚生労働省は、大臣官房生活衛生・食品安全審議官名をもって各都道府県知事等宛てに標記通知を出した。

 その主な内容は、次の通り。

 食品衛生法第22条の規定に基づく食品衛生に関する監視指導の実施に関する指針第3の六に基づき、夏期に多発する食中毒の発生防止を図るとともに、積極的に食品衛生の向上を図る見地から、全国一斉に標記取締りを行うこととしましたので、別添の実施要領に基づき遺漏なく実施するようお願いします。(別添は未公表、時期は例年7月一杯)

 本実施要領は、夏期一斉取締りの実施に当たっての基本的事項のみを示しているため、各都道府県等において、都道府県等食品衛生監視指導計画等に基づき、適宜事項を追加して実施してください。

https://www.mhlw.go.jp/content/001104798.pdf

4 食品ロス量(令和3年度推計値)を公表

 令和5年6月9日、農林水産省は、表記について公表した。

 その概要は、次の通り。

 農林水産省は、食品ロス削減の取組の進展に活かすため、食品ロス量の推計を行い、消費者庁、環境省とともに公表しています。

 令和3年度の食品ロス量は523万トン(前年度比+1万トン)、このうち食品関連事業者から発生する事業系食品ロス量は279万トン(前年度比+4万トン)、家庭から発生する家庭系食品ロス量は244万トン(前年度比▲3万トン)となりました。

 今後とも事業者や消費者、地方公共団体、関係省庁とも連携し、より一層の食品ロス削減のための取組を進めてまいります。

https://www.maff.go.jp/j/press/shokuhin/recycle/230609.html

5 消除予定添加物名簿の作成に係る既存添加物の販売等調査について

 令和5年6月20日、厚生労働省は、医薬・生活衛生局食品基準審査課長名をもって各検疫所長宛て表記通知を出した。

 その主な内容は、次の通り。

 食品衛生法及び栄養改善法の一部を改正する法律(平成7年法律第101号)附則第2条の3の規定(以下「消除規定」という。)により、厚生労働大臣は、その販売、製造、輸入、加工、使用、貯蔵及び陳列(以下「販売等」という。)の状況からみて、現に販売の用に供されていないと認める既存添加物について、消除予定添加物名簿を作成の上公示し、必要な手続を経て、既存添加物名簿(平成8年厚生省告示第120号)からその名称を消除することができることとされており、これに基づき、これまでに132品目が消除されています。

 厚生労働省において、現に既存添加物名簿に収載されている357品目の販売等の実態につき厚生労働科学研究等により予備的な調査を行ったところ、別添1に掲げる78品目の既存添加物について、現に販売の用に供されていない可能性があることから、今般これらの品目の販売等の実態について調査を行うこととしました。

 つきましては、貴所における輸入者に対し、調査対象の既存添加物について、輸入がなされているのであれば、別記の実施要領の別添2-1及び2-2により申出がなされるよう、周知方よろしくお願いします。

 なお、申出がなかった既存添加物又はこれを含む製剤若しくは食品は、現に販売等されていることを証明するに足りないものとして、消除予定添加物名簿に名称を記載する既存添加物となりますので御留意ください。

https://www.mhlw.go.jp/content/11135200/001110609.pdf

6 腸管出血性大腸菌による広域的な感染症・食中毒に関する調査について(再周知)

 令和5年6月28日、厚生労働省は、健康局結核感染症課及び医薬・生活衛生局食品監視安全課の連名で各都道府県等衛生主管部(局)宛て表記事務連絡を出した。

 その主な内容は、次の通り。

 令和5年第1~23週までの期間において感染症発生動向調査に報告された腸管出血性大腸菌感染症の届出数は例年より多い状況で推移しており、平成26年以降で最も多くなっています。また、血清群・毒素型の内訳としてO157/VT2(ベロ毒素2型)の届出数が例年より多い状況で推移しています。

 腸管出血性大腸菌による感染症等の調査は、平成30年6月29日付け厚生労働省健康局結核感染症課・医薬・生活衛生局食品監視安全課事務連絡「腸管出血性大腸菌による広域的な感染症・食中毒に関する調査について」(別添)に基づき対応いただいているところですが、引き続き、感染症部局、食品衛生部局及び検査部門が連携を図り、確実かつ可能な限り迅速な調査を行うようよろしくお願いします。

https://www.mhlw.go.jp/content/001114577.pdf

7 食品表示の適正化に向けた取組について

 令和5年6月29日、消費者庁は、食品衛生の監視指導の強化が求められる夏期において、食品の表示・広告の適正化を図るため、都道府県等と連携し、食品表示法等の規定に基づき下記の取組を実施することを公表。

 その主な内容は、次の通り。

・夏期一斉取締りの実施について
 国及び都道府県等においては、食品衛生の監視指導の強化が求められる夏期において、食中毒などの健康被害の発生を防止するため、従来から食品衛生の監視指導を強化してきたところです。例年どおり、この時期に合わせ、食品等の表示の信頼性を確保する観点から、食品表示の衛生・保健事項に係る取締りの強化を全国一斉に実施します(別紙)。
(1)実施時期
   令和5年7月1日から同月31日まで
(2)主な監視指導事項
   ア アレルゲン、期限表示等の衛生・保健事項に関する表示
   イ 保健機能食品を含めた健康食品に関する表示
   ウ 生食用食肉、遺伝子組換え食品等に関する表示
   エ 道の駅や産地直売所、業務用加工食品に関する表示
   オ 食品表示基準に基づく表示方法の普及・啓発

・表示の適正化等に向けた重点的な取組について
 (1)カンピロバクター食中毒対策の推進について
 (2)容器包装詰低酸性食品に関するボツリヌス食中毒対策について
 (3)くるみの特定原材料への追加及び特定原材料に準ずるカシューナッツの取扱いについて
 (4)外食・中食における食物アレルギーに関する情報提供に係る啓発資材の活用について

https://www.caa.go.jp/notice/assets/representation_cms202_230629_1.pdf