2000(平成12)~2022(令和4)年の23年間における 食中毒発生状況について

 厚生労働省食中毒統計資料によると、2000~2022年の23年間における食中毒件数の推移は、図1のとおりで、細菌性食中毒(赤色線)の減少に伴い総数(黒色線)も全体的に減少傾向(最多2000年2,247件→最少2021年717件)を示している。また、患者数の推移は、図2のとおりで、食中毒件数の減少に伴い同様に減少傾向(最多2000年43,307名→最少2022年6,856名)を示している。
 食中毒件数の総数が1,000件を割り、2020年に887件、2021年に717件となったが、この要因として次のことが考えられた。
  1. 2013(平成25)年以降に寄生虫性食中毒(黄色線)の一つであるアニサキス食中毒が増加傾向を示し、2018(平成30)年に前年より245件多い487件となったが2019(平成31、令和元)年に減少に転じ、2021年までほぼ横ばいで推移したこと。
  2. 細菌性食中毒及びウイルス性食中毒(青色線)が2019年の603件(細菌性385件、ウイルス性218件)より2020年が374件(細菌性273件、ウイルス性101件)、2021年が302件(細菌性230件、ウイルス性72件)と200件以上減少したこと。
  3. 2020年1月に国内で最初の新型コロナウイルス感染症患者が確認されて以降、新型コロナウイルス感染予防のため手洗いの励行や消毒用アルコールによる消毒が徹底されたこと及び飲食店の営業自粛に伴い利用者が減少したこと。
 なお、2022年には、新型コロナウイルス感染症の脅威が薄れ、社会経済活動の活発化に伴い、飲食店の利用者が増え、アニサキス食中毒及びカンピロバクター食中毒が増加したことにより食中毒件数が962件と増加した。しかし、この年の患者数は、過去最少の6,856人と10,000人を下回った。

 1985(昭和60)年以降の患者数が2,000名以上の大規模食中毒発生状況は、表1のとおり14件で、患者数3,000名以上が6件あり、原因物質としてサルモネラ属菌が2件(S.typhimurium、S.Enteritidis)、黄色ブドウ球菌、腸管出血性大腸菌O157、カンピロバクター属菌(Campylobacter jejuni)及び不明がそれぞれ1件あった。これらの内、1988(昭和63)年6月に北海道で発生したサルモネラ食中毒(原因物質-S.typhimurium、原因食品-錦糸卵)が患者数10,476名と2番目、1996(平成8)年7月に大阪で発生した腸管出血性大腸菌O157食中毒(原因食品-学校給食)が患者数7,966名と3番目に患者数が多かった。
 また、患者数3.000名以下が8件あり、殆どが給食関連で、原因物質としてノロウイルス及び毒素原性大腸菌が各々2件、病原大腸菌が1件、不明が3件あった。
 なお、2000年以降に5件の発生があり、2000年6月に大阪で発生したわが国最大の患者数13,420名の黄色ブドウ球菌食中毒(原因食品-加工乳、乳製品)、2件のノロウイルス食中毒、病原大腸菌食中毒(原因物質-O7:H4)及び毒素原性大腸菌食中毒(O25 LT産生)であった。


図1 食中毒件数の推移(2000~2022年)


図2 食中毒患者数の推移(2000~2022年)

No 発生年月 発生場所 患者数(名) 原因食品 原因物質
1 1985. 6 埼 玉 3,010 不  明 カンピロバクター属菌
(Campylobacter jejuni)
2 1988. 6 北海道 10.476 錦糸卵 サルモネラ属菌
(S.Typhimurium)
3 1988. 6 熊 本 2,051 学校給食 不  明
4 1990. 4 香 川 2,052 給食弁当 毒素原性大腸菌(O25:H-)
5 1992. 4 大 阪 3,606 卵加工品 サルモネラ属菌
(S.Enteritidis)
6 1993. 7 岐 阜 2,697 学校給食 不  明
7 1996. 7 大 阪 7,966 学校給食 腸管出血性大腸菌O157
8 1997. 6 兵 庫 2,758 昼食弁当 不  明
9 1997.11 兵 庫 3,044 弁  当 不  明
10 2000. 6 大 阪 13,420 加工乳、乳製品 黄色ブドウ球菌
11 2012.12 広 島 2,035 給食弁当 ノロウイルス
12 2021. 4 岡 山 2,545 給食弁当 ノロウイルス
13 2022. 6 埼 玉 2,958 海藻サラダ
(学校給食)
病原大腸菌(O7:H4)
14 2022. 8 東 京 2,548 不  明
(仕出し弁当)
毒素原性大腸菌
(O25・LT産生)
表1 患者数が2,000以上の大規模食中毒発生状況