【講演No.3】

「ウイルス性食中毒の動向と胃腸炎ウイルス研究のトピックス」
―アフターコロナパンデミック時代の胃腸炎ウイルスとSARS-CoV-2の最新情報―

北里大学大村智記念研究所ウイルス感染制御学研究室
感染制御科学府ウイルス学教室 教授 片山和彦

 ヒトに感染するノロウイルス(Human Norovirus、HuNoV)は世界中に広く分布し、HuNoVによる集団食中毒事件数はトップクラスを維持していた。
 しかし、2020年から始まったSARS-CoV-2の感染制御対策としてマスク着用、手指消毒の習慣が広く行き渡り、SARS-CoV-2などの呼吸器感染性ウイルスだけでなく胃腸炎ウイルスの感染者数も激減した。
 しかし、2023年5月にSARS-CoV-2が5類感染症に移行して以降、第9波のXBB株による流行があり、その後2024年年始からオミクロンBA.2.86系のJN1株による第10波の流行が立ち上がりつつある。
 インフルエンザウイルスの同時流行、HuNoVに加え、その他の感染性胃腸炎の急速な増加も報告されている。
 これは、人々の間でウイルス感染症に対する感染予防対策疲れが蓄積し、SARS-CoV-2対策で抑制し続けていた旅行・外食などの再活性化が一因となっていると考えられる。

 本講演では、アフターコロナパンデミックの胃腸炎ウイルス(HuNoV, サポウイルス, アストロウイルスなど)とSARS-CoV-2に関する最新情報を提供し、これらのウイルス感染症の感染制御に有効な対策について、今一度、再考してみたい。